BNCTとは何か

BNCT(Boron Neutron Capture Therapy/ホウ素中性子捕捉療法)は、 がん細胞に集まりやすい性質をもつホウ素薬剤を投与し、 そこに中性子を照射することで、 細胞内で起こる反応を治療に利用する放射線治療です。 従来の放射線治療と異なり、反応が起こる範囲が細胞レベルに近く、 「がん細胞をねらう」という発想で研究・臨床応用が進められてきました。

照射は原則として1回で行う計画で組まれます。 手術が難しい病変や、既存の放射線治療では十分な効果が得られにくい場合にも、 治療選択肢となる可能性がある治療として位置づけられています。

POINT
BNCTは「万人向けの治療」ではありません。病変の位置・大きさ・深さ、これまでの治療歴、 全身状態などをふまえ、実施医療機関ごとに個別に適応が判断されます。

治療のしくみ(3ステップ)

治療の理論は、大きく3つのステップに整理されます。

1
ホウ素薬剤を投与する
がん細胞に集まりやすい性質をもつホウ素薬剤を投与します。どの程度集まるかは事前検査で確認します。
2
n
中性子を照射する
専用の装置で中性子を照射します。線質、照射範囲、深さ、正常組織への影響を含めた計画が重要です。
3
細胞内の反応を利用する
ホウ素と中性子が反応すると、細胞内の近い範囲で作用する粒子が生じます。この点が通常の放射線治療と異なる特徴です。

出典:湘南鎌倉総合病院 先端医療センター「BNCTのしくみと歩み」(skgh.jp/department/advanced/bnct/)/参照日:2026年7月20日。

日本での研究と臨床応用の歩み

BNCTの考え方自体は古く、日本では大学・研究機関・医療機関を中心に、 研究用原子炉を用いた研究や臨床研究が長く続けられてきました。 近年は加速器を用いた中性子発生装置の開発が進み、医療機関で実施できる治療へと発展しています。

20世紀前半~
治療概念の誕生
ホウ素と中性子の反応をがん治療に応用するという発想として、研究が始まる。
~2010年代
研究用原子炉を用いた国内研究
大学・研究機関の研究用原子炉を用い、日本国内でBNCTの研究・臨床研究が積み重ねられる。
2010年代~
加速器型 中性子発生装置の開発
病院設置型の装置開発が進み、大学・研究施設の原子炉に依存しない実施が可能に。
2020
頭頸部がんへの保険適用開始
BNCT用医療機器とホウ素薬剤が承認され、切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんを対象に保険診療が始まる。
現在
複数施設で治療・研究が並行
保険診療・治験・特定臨床研究・自由診療という異なる枠組みで、複数の医療機関が対象疾患に応じてBNCTを実施している。

出典:湘南鎌倉総合病院「BNCTのしくみと歩み」(skgh.jp)、 厚生労働省・関連公表資料を要約/参照日:2026年7月20日。

国内でBNCTを行う医療機関

現在、国内でBNCTを実施している医療機関は、大きく保険診療で行っている施設と、 治験・特定臨床研究・自由診療という枠組みで行っている施設に分かれます。 対象となるがんの種類や条件は施設ごとに異なるため、 「どの疾患で・どの枠組みで検討したいか」を整理したうえでの相談が有用です。

Hokkaido Tohoku Kanto Kansai Kyushu 1 2 3 4 5 6 N
保険診療で実施
治験・特定臨床研究・自由診療で実施
  1. 大阪医科薬科大学 関西BNCT共同医療センター Osaka Medical and Pharmaceutical Univ. — Takatsuki, Osaka 保険診療 対象:切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん
  2. 南東北BNCT研究センター Southern Tohoku BNCT Research Center — Koriyama, Fukushima 保険診療 対象:切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん
  3. 湘南鎌倉総合病院 先端医療センター Shonan Kamakura General Hospital — Kamakura, Kanagawa 特定臨床研究/自由診療 対象:全身の固形腫瘍(個別判断)
  4. 江戸川病院 Edogawa Hospital — Edogawa, Tokyo 特定臨床研究/自由診療 対象:再発乳がん、FDG-PET陽性の浅在性腫瘍 等
  5. 国立がん研究センター中央病院 National Cancer Center Hospital — Chuo, Tokyo 治験 対象:胸部固形がん、皮膚腫瘍 等
  6. 筑波大学附属病院 Univ. of Tsukuba Hospital — Tsukuba, Ibaraki 治験 対象:初発膠芽腫(グリオブラストーマ)

※上記は公開情報に基づく2026年7月時点の要約です。対象疾患・実施枠組みは各施設の判断で変更される可能性があります。最新の実施状況は各医療機関の公式情報をご確認ください。

実施医療機関一覧

各施設の位置づけを、横並びで比較しやすい形にまとめました。

FAC / 01
OSAKA — TAKATSUKI
大阪医科薬科大学
関西BNCT共同医療センター
保険診療
切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対して、保険診療としてBNCTを実施している施設のひとつ。
対象:頭頸部がん(保険適用)
FAC / 02
FUKUSHIMA — KORIYAMA
南東北BNCT研究センター
(南東北がん陽子線治療センター 隣接)
保険診療
頭頸部がんに対する保険診療BNCTを実施。加速器型BNCT装置を用いた臨床経験を持つ研究センター。
対象:頭頸部がん(保険適用)
FAC / 03
KANAGAWA — KAMAKURA
湘南鎌倉総合病院
先端医療センター
特定臨床研究 自由診療
高出力の新型 nuBeam システムを用い、自由診療と特定臨床研究の両方の枠組みでBNCTを実施。全身の固形腫瘍を対象に、病変の位置・大きさ・深さ、治療歴などをふまえ個別に検討。IAEA「Rays of Hope」のアンカーセンターとしても連携。
対象:全身の固形腫瘍(個別判断)/サポートデスクを設置
FAC / 04
TOKYO — EDOGAWA
江戸川病院
特定臨床研究 自由診療
再発乳がんや FDG-PET 陽性の浅在性腫瘍を対象に、特定臨床研究および自由診療の枠組みで BNCT を実施。
対象:再発乳がん・浅在性腫瘍 等
FAC / 05
TOKYO — CHUO
国立がん研究センター中央病院
治験
胸部固形がんや皮膚腫瘍などを対象に、治験としてBNCTを実施。適応可否は治験プロトコルに準拠。
対象:胸部固形がん・皮膚腫瘍 等
FAC / 06
IBARAKI — TSUKUBA
筑波大学附属病院
治験
初発膠芽腫(グリオブラストーマ)を対象に、治験として BNCT を実施。
対象:初発膠芽腫(治験)
DISCLAIMER JMHCは医療エージェントとして、公開情報に基づき国内のBNCT実施医療機関を横並びでご紹介しています。特定の医療機関の推奨・優劣を示すものではなく、最終的な治療方針の判断は各医療機関の医師と患者ご本人・ご家族の相談によるものとなります。

JMHCの役割 — 医療エージェントとして

JMHCは、日本の医療機関で受診・治療を検討される海外の患者さま・ご家族・紹介元の医師の皆さまに対して、 渡航前の情報整理から、日本国内での受診サポートまでを一貫してご案内する医療エージェントです。 BNCTのように「実施医療機関ごとに条件が異なる」治療については、 ご相談内容をふまえて複数の候補施設をご案内し、比較して検討できる形で情報を整理します。

医療機関のご案内
対象疾患・枠組みに応じて、複数の候補施設を公平にご紹介します。
医療情報の整理
診療情報提供書・画像資料の翻訳・整理をサポートします。
渡航・滞在の手配
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